法と論理Ⅰ(形式論理)
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 法と論理Ⅰでは命題論理学・述語論理学を扱う基本的技能を習得します。思考の論理的形式Ⅰ・Ⅱの応用が出来るようになります。命題論理学の「統語論」は思考の論理的形式Ⅰで、「意味論」は旧課程思考の論理的形式で学習できます。それぞれ補完的な役割を果たしていますので、法と論理Ⅰ・と合わせて勉強すると、力がつくでしょう。
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1. 集合 集合の要素:集合の内包的表示と外延的表示[→教科書:田辺勉(1993)20ページ。倍数の集合の関係テスト]
[授業目標]論理と集合の基礎を学ぶ

はじめに:「論理的」とは? 法と論理Ⅰを担当いたします九鬼と申します。
 まず「論理的」とは何かについて簡単に説明しておきます[→野矢茂樹、2006、第一章] 。それを通じて論理学と、法学との関係をおぼろげながら、浮かび上がらせましょう。
 「論理的/非論理的」って、色々な意味で使われます。およそ「論理的」ということばで意味されることがらは、一般的に言って「一貫している」とか「理詰めだ」とかであって、裏返せば「非論理的」とは「飛躍している」・「支離滅裂」とか「理屈が通ってない」とかのことでしょう。
 おそらく消極的な意味を籠め「非論理的に」(=「思いつきで」)しゃべるといったさい、それまでの発言を無視して、次々と発言を続けていく場合が想定されています。ということは、それまでの発言と、きっちり関係付けて次の発言をすることを、「論理的である」と形容してよいでしょう。ですからこう言えます。「「論理(的である)」とは、言葉と言葉の、関係のあり方の一種なのだ」と。言葉と言葉をきちんと関係づけて使う人は「論理的」で、そのときそのときで、脈絡のない発言をする人は「非論理的」ということになります(このあたり、野矢茂樹氏の受け売りです)。
 つまり論理的な文章とは、思考の筋道をそのまま表わしたものではなく、思考の結果を、できるだけ一貫した、飛躍の少ないかたちで表現したもの、ということになります。したがって論理的な力とは、思考力のように新しいものを生み出す力ではなく、物事をきちんと伝える力であって、だからこそ文章が法の領域で現われるとして、その解釈をきちんと伝えるための基本となるものです。
 論理的能力とは、言語的能力のうちでも、要するに言葉と言葉の関係を把握する力です。それは物事を論じようとするときの「言葉の関係」を主題的に扱うものです。ですから前提を正しいと認めたならば、必ずその結論も正しいと認めなければならない。それが論理的に正しい推論でしょう。
 抽象的な話が続きましたので、具体的イメージを持ってもらうために、問いを出します。
 「以下の文章を読んで問いに答えてください。
 「猥褻表現物に関する罪は、道徳的秩序に関する罪であるが、そもそも道徳ないし倫理は本来自律的なものであって、法的規制、ことに刑罰をもってするそれとは性質上相容れないものである。したがって、……個人的鑑賞目的による単純な所持までも規制の対象とすることは、明らかに本来個人の自由に委ねられるべき領域と、法律をもって規制すべき領域との境界線を踏み越えるものである。それは、……本来最小限の道徳であるべき法律が個人の自由に委ねられるべき領域に干渉するものとして、条理上当然に排除されるべきである」(東京高判平成4・7・13判時1432号48ページ)
 故に猥褻表現物に関する罪は、法的規制の対象となるとは限らない」。
 いいですか。猥褻表現物に関する罪は道徳的秩序に関する罪です①。また道徳的に問題になることは法的規制に馴染みません②。しかるに道徳的秩序に関する罪ならば道徳的に問題になるとは言われていません。故に①・②から、猥褻表現物に関する罪は法的規制に馴染むとも、馴染まないとも断言できません。実際、刑法175条では販売目的のある、猥褻物の所持を禁止しています。このように論理の筋道を追ってみると、色々な理屈がつけられることがわかります。
※注意:上告審最判平成7・4・13刑集49巻4号では関税法(罰則規定をもつ点において、広い意味では刑法に属します)違反を根拠に、〔行政上の規制の実効性を担保するという〕別の論理構成で、猥褻物の単なる所持も法的規制の対象としました[→三井誠・曽根威彦・瀬川晃編、2000、『入門 刑事法』有斐閣、23-24ページ]。結論は一緒でも理屈はちがうというわけですね。
 どうでしょう。大体、論理学というものと、法解釈のつながりが見えてきませんか。こうした関心に即して、随時、論理学の理解に役立つ公務員試験の問題を適宜織り込んで、授業を進めて行きたいと思います
。授業は論理学の基本となる集合の問題から入っていきます。

参考書一覧

論理トレーニング101題 【著】野矢 茂樹 価格:¥ 2,100 (税込)単行本 ; 182 p ; サイズ : 21(cm) 出版社 : 産業図書
〔新版〕論理トレーニング 【著】野矢 茂樹 価格:¥ 2,310 (税込)単行本 ; 187 p ; サイズ : 21(cm)出版社 : 産業図書
論理学 【著】野矢 茂樹 価格:¥ 2,730 (税込)単行本(ソフトカバー) ; 261 p ; サイズ : 21(cm) 出版社 : 東京大学出版会
入門!論理学 【著】野矢 茂樹 価格:¥ 777 (税込)新書 ; 250 p ; サイズ : 18(cm) 出版社 : 中央公論新社
心理パラドクス 錯覚から論理を学ぶ101問 【著】三浦俊彦 価格:¥1,575円(税込)サイズ : A5;出版社 : 二見書房
論理サバイバル 議論力を鍛える108問【著】三浦俊彦 価格:1,575円(税込)サイズ :A5;出版社 : 二見書房
論理パラドクス 論証力を磨く99問【著】三浦俊彦 価格 :1,575円(税込)サイズ : A5;出版社 : 二見書房
論理的に書くためのルールブック【著】アンソニー・ウェストン(古草秀子訳) 価格 :1,155円(税込)サイズ:四六判;出版社:PHP研究所
論理力を鍛えるトレーニングブック【著】渡辺パコ 価格 :1,470円(税込)サイズ:19cm;出版社:かんき出版
統計でウソをつく法【著】ダレル・ハフ(高木秀玄訳)

価格:924円(税込)サイズ:新書;出版社:講談社ブルーバックス

〔問い〕以下の言葉の定義を与えよ。空集合、部分集合、全体集合、補集合。

※注意 Aの補集合を¬Aで表すことにする。教科書と違うので注意されたい。¬Aは本来、Aの否定を表わすが、HP上では補集合ということにしておく。

 論理学においては集合論が基本となります。
 集合とは任意の種類あるいは存在者の総体もしくは集まりのことです。集合はいくつかの要素または元から成っています。通例、何らかの共通性をもっている要素から、集合はできています〔もちろん数学等の場面では共通性がないこともままあります〕。例えば、すべての日本人の集合とか、ある図書館のすべての本の集合とかいったように。
 表記法上の約束を述べましょう。集合を示すのに大文字のアルファベット記号A,B,C,・・・、要素を示すのに小文字のアルファベット記号a,b,c, ・・・を使います。特別な記号∈を導入して、「の要素である」と読むことにします。例えば「aはBの要素である」は a∈Bと書きます。
 「次の要素、1,2,3、から成る集合」とか「3以下の自然数」といった表記法が、集合を表現するために必要となります。この例から分かるように集合を定義するには少なくとも二つの方法があります。
 枚挙:{1、2、3}   記述:{x│xは3以下の自然数}
 前者を集合の外延的表示、後者を集合の内包的表示と言います。驚く人もいるかもしれませんが、集合論は集合の要素の数が、1または0の集合も認めています。たとえ一人の要素、人間aさんしか与えられていないとしても、aさんの集合 {a}を作ることができます。aと集合{a}は違うものだ、ということを憶えておくことは大切です。
 要素の数が0の集合は空集合とよばれ、唯一つしか存在しない。それゆえ特別の記号∮で示せます。
また集合Aの要素の数をn(A)と書きます。A=∮のときn(A)=0ですし、A={a}のときn(A)=1です。

 集合論の多くの概念は集合間の関係にかかわるものです。それらの関係は、当該集合を円によって図式化することで、表わせます。たとえばすべての黄色人種の集合とすべての日本人の集合を考えてみましょう。すべての日本人は黄色人種であるから下のように描けます。ここで Aはすべての黄色人種の集合であり、Bはすべての日本人の集合としたとき BをAの部分集合と呼び、B⊆Aと書きます(下線が引いてあるのは二つの集合が等しい場合があるからです)。

 集合の演算。二つの集合AとBが与えられると、AとBの両方の要素であるすべての対象から構成されるような集合が定義できます。この集合は AとBの交わりと呼ばれ、A∩Bで表わされます。Aがすべての大学生の集合で、Bがすべての日本人の集合なら、A∩Bはすべての日本人であり、かつ大学生の集合です。

 AとBの結びと呼ばれ、A∪Bで表わされる。Aが『海辺のカフカ』を読んだすべての人の集合で、Bが『蹴りたい背中』を読んだすべての人の集合なら、A∪Bは『海辺のカフカ』か『蹴りたい背中』か(あるいは両方)を読んだ人すべての集合です。

〔問い〕集合基本テスト
U={x|20以下の自然数}
A={x|Uの中でも2の倍数}
B={x|Uの中でも3の倍数}
としたとき(1)まず各々の集合の外延を表示し、ベン図を書け。要素の数を要求しているのではない。
(2)n(A)、 n(B)、 n(A∩B)、 n(A∪B)、 n(¬A∩¬B)を求めよ。
(3)¬A∩¬Bの要素を列挙せよ。

〔勉強のすすめ〕発展問題:集合の要素の数から論理へ

A={太郎、次郎}  n(A)=2
B={次郎、花子}  n(B)=2
A∩B={次郎}
←AかつB:交わりは「かつ」の親戚。
n(A∩B)=1
A∪B={太郎、次郎、花子}
←AまたはB:結びは「または」の親戚。 
n(A∪B)=n(A)+ n(B)-n(A∩B)=2+2-1=3
U={父の豊、母の早苗、太郎、次郎、花子}={x│xは鈴木家の一員}
n{U}=5
¬A={父の豊、母の早苗、花子}
n(¬A)=n{U}-n(A)=5-2=3
¬(A∪B)=¬A∩¬B={父の豊、母の早苗}
n(¬A∩¬B)=n(¬(A∪B))=n(U)-n(A∪B)=5―3=2

上の集合の数の議論から明らかように
A∪B=(¬A∩B) ∪(A∩B) ∪(A∩¬B)
U=A∪¬A
このことをベン図で示しなさい。

 数学の集合論から出発して論理学へ進みます。
 そこから法学の話と結びつけます。
SはM、MはP、故にSはPというような三段論法の一類型が、論理を学ぶ上での基本です。

  

2. 命題と論理 論理と集合[→教科書:田辺勉(1993)26-27ページ]
[授業目標]ベン図の基礎を親しむ

注意 命題を単位とする命題論理学と、命題内部の構造まで分析する述語論理学とでは、論理と集合の関係をどう考えるか焦点が異なってきます。ここでは直感的に理解しやすい「古典論理学をベースにした述語論理学」を、取り上げます述語論理学ならばベン図が有効です。


「カラスならば鳥類である」ときカラス⊆鳥類
pならばq⇔ P⊆Q
「カラスならば爬虫類でない」ときカラス⊆¬爬虫類
pならばqでない⇔ P⊆¬Q
「すべてのカラスは爬虫類ではない」とき「カラスの中には爬虫類は存在しない」(また「すべての爬虫類はカラスでない」「爬虫類の中にはカラスは存在しない」も成立する)
pならばqでない⇔ P∩Q=∮
この辺り基本中の基本だから、テストでも頻出します。
〔例題〕
 商大生の剣道部員がいることを図示するベン図を描いてみて下さい (全体集合:日本の大学生)[→交わりに注目しましょう]。
 商大生であるかもしくは剣道部員である人が存在することを図示するベン図を描いてみて下さい (全体集合:日本の大学生)[→結びに注目しましょう]。
 男性以外の人間は女性であることを示すベン図を描いてみて下さい (全体集合:人間)[→補集合に注目しましょう。]。

〔例題〕
 商大生なら大学生であることをベン図を描いて示しなさい(全体集合:日本人)。
 2の倍数でありかつ3の倍数は6の倍数であることをベン図を描いて説明しなさい(全体集合:自然数)。


〔問い〕×がAさんのとき
(1)Aさんは独身ですか。
(2)Aさんは仮面ライダーのファンですか。
(3)Aさんは大学生ですか。
(4)Aさんは配偶者はいますか。
(5)AさんはOLですか。
(6)Aさんは小芝風花さんですか。

〔問い〕論理と集合テスト
U={x|すべての人間}
A={x|日本国民}
B={x|何らかの基本的人権の享有を妨げられるもの}
としたとき日本国民は、すべての基本的人権を妨げられないことを表すベン図を描きなさい。

補足:外国人の基本的人権は、外国人在留制度の枠内に制限されており、在留の許否を決する国の裁量を左右するまでの保障は与えられていない (マクリーン事件)。いわんや参政権も与えられていない。

〔述語論理の基本〕
すべてのPはQである。=すべての要素についてPならばQである。
⇔P⊆Q・・・・・①
すべてのPはQでない=すべての要素についてPならばQでない
⇔P⊆¬Q
⇔P∩Q=∮・・・②
或るPはQである=(すべての要素についてPならばQでない)でない
⇔P∩Q≠∮・・・③


① すべてのカラスは鳥である
② すべてのカラスは爬虫類でない
③ 或る薬品は毒である       という例で、ベン図によって確かめよ。

②と③について言えば②すべての爬虫類はカラスでないも共になりたつ。③或る毒は薬品であるも共に成り立つ。

(男の中には怠慢なものがいる)ということはない。=すべての男は怠慢でない。 「(男の中には怠慢なものがいる)ということはない。」と、「男の中には怠慢でないものがいる。」は違う。
(すべての男は怠慢である)ということはない。=男の中には怠慢でないものがいる。「(すべての男は怠慢である)ということはない。」と「すべての男は怠慢でない。」は違う。
或るPがQでない、と(あるPがQである)ではない、は違う。PのなかにはQでないものがある、と(PのなかにはQがある)ではない、は違う。
すべてのPはQでない、と(すべてのPはQである)ではない、は違う。
存在(特称)の否定=否定の全称  (或るPがQである)ではない=すべてのPはQでない
全称の否定=否定(特称)の存在  (すべてのPはQである)ではない=或るPがQでない

〔問い〕
①すべての倫理学者は倫理的である、の否定を作れ。
②或る倫理学者は倫理的である=倫理学者の中には倫理的なものがいる、の否定を作れ。
③すべての日本人は白人でない、と同じ主張をすべての白人を主語にして述べよ。
④或る食品は危険物である=食品の中には危険物がある、と同じ主張を或る危険物を主語にして述べよ。

〔勉強のすすめ〕以下の関係をベン図で表わせ。
・A新聞をとっている家はB新聞もとっている。
・A新聞をとっている家はC新聞もとっている。
・B新聞とD新聞の両方をとっている家がある。
・C新聞とD新聞を両方とっている家はない。
このとき、B新聞をとっている家のうちには、C新聞をとっていない家があることを説明せよ。

3.ならばの基礎 逆・裏・対偶[教科書:田辺勉(1993)2-5ページ 参考書:野矢茂樹(1994)28-31ページ]
[授業目標]逆・裏・対偶を習得する

■命題、真、偽
真と偽という言葉に慣れよう(以下P、Q、R・・・で命題を表す。真の命題を否定すれば偽、偽の命題を否定すれば真となる) 。

■PならばQという形の命題[P→Q]:

2x=6ならばx=3
2x=6という事柄が成り立つ可能な世界が、x=3という事柄が成り立つ可能な世界に含まれる。
2x=6ならば(2x-6)*x=0
2x=6という事柄が成り立つ可能な世界が、x=3またはx=0という事柄が成り立つ可能な世界に含まれる。このことから分かるように、(2x-6)*x=0ならば2x=6は成り立ちません。
(すべてのxについてxが)カラスならば鳥である。
これを以下ではカラスならば鳥である、と略す。もしくは、カラスは鳥であると呼ぶ。
PならばQという形の命題においてPを仮定と呼び、Qを結論と呼ぶ。[→教科書2ページ]

■Pでない
Pでないことはない=P これを二重否定という。二重否定は肯定Pに書き換えられる。

■逆・裏・対偶
逆・裏は必ずしも真でない。「カラスは鳥である」の
逆:「鳥ならばカラスである」、は偽
裏:「カラスでなければ鳥でない」、は偽
対偶:「鳥でなければカラスでない」、は真
逆の逆、裏の裏、対偶の対偶はもとの命題に戻る。
もとの命題と対偶の真偽は一致する。
[→例題1-1]
〔問い〕「信号機が赤ならば進んでいけない」の逆・裏・対偶を述べよ(便宜上、先と紛らわしいが、「信号機が赤」を命題Aと置き、「進んでいけない」を命題Bと置く)。便宜的に、「止まれ」の黄も進むことを許容していないものと解しておく。つまり信号機が赤でなければ進んでよいは偽(なぜならば黄色のとき、進んでいけないから)。

〔勉強のすすめ〕以下の三段論法を考える。
すべての国民は、内容的に平等な法が適用されなくてはならない。
内容的に平等な法の適用される人も、〔法の適用にあたって〕各人の事実上の差異を無視しえない。
すべての国民は、〔法の適用にあたって〕各人の事実上の差異を無視しえない。
A={x|国民}
B={x|内容的に平等な法が適用される人}
C={x|法の適用にあたって事実上の差異を無視してよい人}
このときA,B.Cの関係をベン図で表わしなさい。

〔勉強のすすめ〕ある市民講座で講座A,B.Cの申し込み状況は次のようであった。
 A,B講座を申し込んだ者がいた。
 C講座を申し込まなかった者はA講座も申し込まなかった。
このとき、A,B,Cの3講座を申し込んだ者がいた、ことを説明せよ。

4. 条件法の基礎 条件(「ならば」の)連鎖[→教科書:田辺勉(1993)5-7ぺージ]
[授業目標]条件連鎖の問題に親しむ

■三段論法
PならばQ、 QならばRのとき、ゆえにPならばRが言える。
例:カラスは鳥である、鳥は動物である、カラスは動物である。①
PならばQ、QならばRでないとき、ゆえにPならばRでないが言える。
例:カラスは鳥である、鳥は哺乳類でない、カラスは哺乳類でない。②
PならばQ、(QのなかにはRのものが存在する)ということはない(つまりQならばRでない)、ゆえにPならばRでないが言える。
例:カラスは鳥である、鳥のなかに哺乳類のものが存在することはない、カラスは哺乳類でない。③=②
〔問い〕以下の問題を解け。
(1)上記の①・②をベン図で確かめよ。
(2)上記の①・②タイプに該当する三段論法の例を挙げよ。

〔問い〕PならばQ、 QならばRのとき、¬Rならば¬Pは言えるか。
PならばQ、 QならばRのとき、¬Pならば¬Rは言えるか。
PならばQ、 QならばRのとき、RならばPは言えるか。

命題P「AならばB」について
(1)条件節Aを「前件」と呼ぶ。
(2)帰結節Bを「後件」と呼ぶ。
(3)「BならばA」を命題Pの逆と呼ぶ。
(4)「AでないならばBでない」を命題Pの裏と呼ぶ。
(5)「BでないならばAでない」を命題Pの対偶と呼ぶ。

野矢茂樹、1994、『論理学』東京大学出版会、21ページ参照。
「明日晴れたら動物園に行く」:これを命題Pとする。命題Pを父が子供に言ったとする。
前件真・後件真:次の日晴れて動物園に行ったら、お父さんは嘘をついていない。正直なお父さんである。よってPは真である。
前件真・後件偽:次の日晴れて動物園に行かなかったら。お父さんは嘘つきということになるだろう。よってPは偽である。
前件偽・後件偽:次の日雨が降っていてお父さんは家で、サッカーを観戦しているとする。お父さんは嘘をついていない。しごく普通のお父さんである。よってPは真である。
前件偽・後件真:次の日雨が振っている。それもどしゃ降り。にもかかわらずお父さんは動物園に子供を連れて行く。お父さんの言い分はこうだ。「わしは晴れの日の約束はした。しかし、雨の日は何の約束もしていない」。続けて言う、「だから嘘をついていないんじゃ」。たしかに理屈は合っている。お父さんは嘘をついていないのだろう。つまり命題Pは真である。しかし子供にとっては迷惑なお父さんである。

〔復習〕法と論理復習-1。
問一、 テーブルに4枚のカードが置かれています。片面には文字、片面には数字が書かれています。みなさんから見えるのは、「知」、「キ」、「8」、「17」です。「漢字の裏は偶数だ 」という仮説が正しいかどうか確かめるには、最低どのカードをめくる必要があるでしょうか[→三浦俊彦、2002、『論理パラドクス 論証力を磨く99問』二見書房、12-13ページ]。注意:「あるカードの一面が漢字ならば、その裏は偶数だ」と条件法によって分析できる。
問二、 次の条件文をもとにして、逆・裏・対偶を作れ。
1. 月曜日が祝日ならば、翌日の火曜日が休館になる。
2. カンガルーには育児嚢がついている。
3. 気温が低ければ、雪が降る。
問三、 以下の推論は正しいか。[→鈴木美佐子、2004、『論理的思考の技法Ⅰ』法学書院、42ページ。]

・前衛映画ならエディプス的な精神分析的基礎をもっている。
・ドゥルーズ的映画といわれるものならエディプス的な精神分析的基礎をもっている。
・したがって前衛映画ならドゥルーズ的映画といわれる。
問四、 以下の推論は正しいか。[→鈴木美佐子、2004、『論理的思考の技法Ⅰ』法学書院、42ページより改変。]
・第三の候補が参戦しないなら、大統領は再選されるだろう。
・第三の候補が参戦した。
・なので、大統領は再選されない。
問五、 以下の推論は正しいか。[→鈴木美佐子、2004、『論理的思考の技法Ⅰ』法学書院、42ページより改変。]

・ナッツを食べると湿疹ができる。
・湿疹が現にできた。
・故にナッツを食べた。

〔復習〕法と論理復習-1補
問一
「文字面:Pが漢字なら、その裏の数字面:Qが偶数である」というならば命題があったとする。
① 今、Pが「知」でQが「8」のとき、PならばQは真か偽か。
② 今、Pが「キ」でQが「8」のとき、PならばQは真か偽か。
③ 今、Pが「キ」でQが「17」のとき、PならばQは真か偽か。
④ 今、Qが「8」でPが「キ」のとき、PならばQは真か偽か。
⑤ 今、Qが「17」でPが「知」のとき、PならばQは真か偽か。
⑥ 今、Qが「17」でPが「キ」のとき、PならばQは真か偽か。
問二
① 前衛映画ならエディプス的な精神分析的基礎をもっている。
かつドゥルーズ的映画といわれるものならエディプス的な精神分析的基礎をもっている。
これらの前提が正しいとき、前衛映画ならドゥルーズ的映画といわれるか。
② 前衛映画ならエディプス的な精神分析的基礎をもっている。
かつエディプス的な精神分析的基礎をもっているならドゥルーズ的映画といわれる。
これらの前提が正しいとき、前衛映画ならドゥルーズ的映画といわれるか。
③ 前衛映画ならエディプス的な精神分析的基礎をもっている。
かつエディプス的な精神分析的基礎をもっていないならドゥルーズ的映画といわれない。
これらの前提が正しいとき、前衛映画ならドゥルーズ的映画といわれるか

問三
第三の候補が参戦しないのならば、大統領は再選されるだろう。
上の前提が正しいとき、第三の候補が参戦しなかったとする。そのとき大統領は再選されるは正しいか。
上の前提が正しいとき、第三の候補が参戦したとする。そのとき大統領は再選されないは正しいか。
上の前提が正しいとき、大統領は再選されたとする。そのとき第三の候補は参戦していないは正しいか。

〔勉強のすすめ〕片面にAまたはBの文字、もう片面に〇または×の記号が書かれた多数のカードが並べられている。今、「Aの文字が書かれたカードの反対側の面には、必ず〇の記号が書かれている」という記述が正しいかどうか、確かめたい。そのためには少なくとも、何と何のカードをめくる必要があるか。注意:理由として、記述が偽となるのは、何と何のカードであるから、と答えるのでは舌足らずである。まして確かめるために、何と何のカードをめくるでは、何も言っていないに等しい。

5. 条件法の基礎 条件(「ならば」の)連鎖[→教科書:田辺勉(1993)5-7ぺージ]
[授業目標]条件連鎖の問題に親しむ

〔例題〕教科書例題【1―2】を解け。

〔例題〕教科書例題【1―3】を解け。

 基本は対偶と三段論法の組み合わせです。
 合流=A or B 分岐=A and B
 →否定 逆方向の分岐=not A and not B 逆方向の合流=not A or not B
(のちに教えるド・モルガンの法則を使っています) 

必ず解法も記すこと。[→資格試験研究会編、2003、『上・中級公務員試験 判断推理』実務教育出版。問一~問三、一部改変。問四は表現をわかりやすいよう改めた。]
問一
(ア) AならばBである。
(イ) EならばDである。
(ウ) CならばDである。
(エ) BならばDである。
以上のことから確実に言えるのは次のうちどれか。
1 DでないものはAでない。
2 BならばAである。
3 CならばBである。
4 AでないものはEでない。
5 BならばEである。
問二
「男は身勝手である」「男は愚かである」「老人は被害妄想である」の3つの命題が成立するとき、導き出されない命題は、次のうちどれか。ただし男でない=女である、とする。
1 身勝手でないなら女である。
2 愚かであるなら男である。
3 愚かでないなら男でない。
4 被害妄想でないなら老人でない。
5 女でなければ身勝手である。

問三
人から頼りにされる人物は、他人の立場に立つことができ、かつ人生の知恵を持っている人である。人生の知恵を持っている人や、または、人の苦楽がわかる人は必ず豊富な人生経験を持っているものだ。人から頼りにされない人物は深い人間的畏敬には値しない。
 以上から論理的に導ける命題は、次のうちどれか。
1 人生の知恵を持っている人は、他人の立場に立つことができ、人から頼りにされる。
2 人から頼られる人物は他人の立場に立つことができ、人から頼りにされる。
3 豊富な人生経験を経ていない人物は深い人間的畏敬に値しない。
4 人から頼りにされない人は豊富な人生経験を経ていない。
5 人から頼りにされない人物は、人生の知恵があるが、豊富な人生経験を経ていない。



問四
次の推理のうちで正しいものはどれか。個体と集合の関係は⊆ではなく∈で表わされる。
1 秀才は病弱である。彼は病弱である。ゆえに彼は秀才である。
2 白人は黄色人種ではない。日本人は白人ではない。ゆえに日本人は黄色人種である。
3 インフレならば物価が高くなる。ゆえに物価が高くなったなら、インフレのせいである。
4 スポーツクラブに通っている人々は体力の衰えを感じている人々である。ゆえに、体力の衰えを感じていない人々はスポーツクラブに通っていない。
5 学生の内には勤勉でないものがいる。ゆえに勤勉でないもののなかには学生でないものがいる。
問五 [→野矢茂樹、1994、『論理学』東京大学出版会、79ページ。]
ある禅僧は論理学者でないならば、ある論理学者は禅僧でない、と言えないことを、ベン図を使って説明せよ。

〔勉強のすすめ〕或る草野球のチームのメンバーA~Dについて以下の問いに答えよ。
①Aは火曜日と水曜日以外の試合には参加するとき、Aは金曜日の試合に参加するか。
②Bは午前中の試合には参加しないとき、Bは午後の試合に参加するか。
③Cが参加していないときDも参加していないならば、Dが参加しないときCは参加しないか。
④勝った試合はA~Cが参加していたならば、A~Cのうち誰かが来ていないとき負けであるか。

6. ド・モルガンの法則[→教科書:田辺勉(1993)6-9ページ]
[授業目標]ド・モルガンの法則に慣れる

「太郎はピーマンか宇治原が好きである」、「年度初めは4月1日であり、かつ嘘をついてもよい日である」というように、二個以上の命題を「または」や「かつ」で結合して、複雑な命題を作ることが出来る。
「PまたはQ」が真になるのは、「Pが偽かつQが偽」以外の場合である。つまり少なくとも一方が真であればよい。
「PかつQ」が真になるのは、「Pが真かつQが真」のときだけである。

〔例題〕教科書例題1-5を解け。

■ド・モルガンの法則
(PかつQ)でない=(Pでない)または(Qでない)  下表の緑の可能性
(PまたはQ)でない=(Pでない)かつ(Qでない)  下表の黄の可能性
〔問い〕P、Qに対応する「可能世界」が交わりをもっているとして、ド・モルガンの法則をベン図で確かめよ。

Qである Qでない
Pである
Pでない
Qである Qでない
Pである
Pでない

〔問い〕「太郎はピーマンか宇治原が好きである」を、ド・モルガンの法則を使って否定せよ。
〔問い〕「太郎はピーマンが好きでかつ宇治原が嫌いである」を、ド・モルガンの法則を使って否定せよ。
〔問い〕「年度初めは4月1日であり、かつ嘘をついてもよい日である」を、ド・モルガンの法則を使って否定せよ。

〔問い〕「4月1日は嘘をついてもよい日であるか、嘘で災難にあう日である」を、ド・モルガンの法則を使って否定せよ。

ド・モルガンの法則と合わせて、対偶も復習しておきましょう。
〔問い〕レタスが好きか、ピーマンが好きでない人は芸人には向いていない。 対偶を書いて下さい。
〔問い〕病弱な人は、睡眠を十分取らず、かつ無理な仕事をしている。 対偶を書いて下さい。

〔問い〕勇敢な人は、無鉄砲でなく、かつ臆病でない。対偶を書いて下さい。
〔問い〕判断を誤らない人は、リーダーになるか、または自分で活路を開いていく。対偶を書いて下さい。

〔問い〕オルガンが上手な人は、ピアノも上手い。木琴の上手な人は、ピアノも上手い。この二つの仮定から、ピアノが上手でない人はどのような人と言えるか。

 対偶:前半(前件)の否定・後半(後件)の否定・前後の反転

〔勉強のすすめ〕新聞の購読状況は以下のようである。
A誌をとっていないか、またはB誌をとっていないとき、C誌をとっていない。このとき、C誌をとっているとき、A誌とB誌をとっていると言えるか。 

7. ド・モルガンの法則と条件連鎖の組み合わせ1[→教科書:田辺勉(1993)8-9ページ]

〔復習〕教科書例題1-6を解け。

ならば命題の並列化
pならば(qかつr)の時
pならばqも言えるしpならばrも言える
(並列化)。
pならばqも言えるしpならばrも言える時、pならば(qかつr)が言える。野球選手ならば、スポーツ選手である。野球選手ならば、野球好きである。
例:野球選手ならば、スポーツ選手であり、かつ野球好きである。

(pまたはq)ならばrの時
pならばrも言えるしqならばrも言える
(並列化)。
pならばrも言えるしqならばrも言える時、(pまたはq)ならばrが言える。巨人軍の一員ならば、野球選手である。阪神の一員ならば、野球選手である。
例:巨人軍の一員か、阪神の一員ならば、野球選手である。

「AならばB、AならばC」から「AならばBかつC」が言えること。
Aを仮定するとAならばBよりB。Aを仮定するとAならばCよりC。よってBかつC。故にAならばBかつC。
「AならばC、BならばC」から「AまたはBならばC」が言えること。
AならばC、BならばCから CでないならばAでない、CでないならばBでない。Cでないを仮定するとAでなくかつBでない。故にCでなければAでなく、かつBでない。故に
対偶とド・モルガンの法則より、AまたはBならばC。


〔問い〕「トマトかまたはキュウリが好きな人は、ビタミンのバランスがよい」を前提したとき、「ビタミンのバランスがよくない人はトマトが好きでない」と言えることを示せ。
〔問い〕「健康な人は、快食及び快眠を共に充たしている」を前提したとき、「快眠を充たしていない人は健康な人でない」と言えることを示せ。

 否定のさいド・モルガンの法則を使う。条件法は、並列化・対偶で処理する。

〔問い〕「トマトもキュウリも好きな人は、ビタミンのバランスがよい」を前提したとき、「ビタミンのバランスがよくない人はキュウリが好きでない」と言えるか。
〔問い〕「健康な人は快食、または快眠のいずれかを充たしている」を前提したとき、「快眠を充たしていない人は健康な人でない」と言えるか。
〔問い〕「トマトもキュウリも好きな人は、ビタミンのバランスがよい」「ビタミンのバランスがよくない」「トマトが好きである」を前提したとき、故に「キュウリが好きでない」と言えるか。
【選言的三段論法】AまたはB、かつAでない、ゆえにBである。「または」を取るにはこの選言的三段論法を使います。

〔勉強のすすめ〕以下の推論は正しいか。[ →W・V・O・クワイン著、中村秀吉他訳、1978、『論理学の方法 原著3版』岩波書店、103ページより改変。]
会社の株をもっている証人は従業員である。証人は従業員か会社の株をもっている。ゆえに証人は従業員である。

〔勉強のすすめ〕或る大学で、資格試験のためにA,B二講座を開いた。その後、資格試験の合格者は少なくとも1種類の講座を受講していたことがわかった。このとき2種類の講座とも受講しなかった学生は資格試験に合格しなかった、と言えるか。ただしその大学の学生は全員その資格試験を受験していたものとする。 

8. ドモルガンの法則と条件連鎖の組み合わせ2[→教科書:田辺勉(1993)9-11ページ]
[授業目標]ド・モルガンの法則を復習する。

〔課題〕ド・モルガンの法則復習。
〔課題〕ド・モルガンの法則と対偶復習。

合流:または(or)、分岐:かつ(and)

巨人軍の一員か阪神の一員ならば野球選手である。野球選手ならばスポーツ選手であり、かつ野球好きである。
→対偶
スポーツ選手でないか野球好きでないならば合流野球選手でない。野球選手でないならば巨人軍の一員でないし、かつ阪神の一員でない分岐

〔問い〕次の①・②・③からどのような推論が可能か。
①認識可能なものは経験に基礎をもつ。
②認識不可能なものは、イメージすることも不可能である。
③想像不可能なものは、認識することも不可能である。

〔問い〕次の①・②・③からどのような推論が可能か。
①休日には久美子は英会話学校に行く。
②休日でない日には一人は講義に出たうえで、さらに英会話学校に行く。
③久美子が英会話学校に行く日はバスと電車が空いている。

〔復習〕今まで解いた問題の復習。

〔勉強のすすめ〕以下の文からどのような帰結が言えるか。[ →W・V・O・クワイン著/中村秀吉他訳、1978、『論理学の方法 原著3版』岩波書店、101ページより改変。]
①この家にいる動物は猫である。
②猫はねずみを殺す。
③肉食動物でないものはすべてねずみを殺さない。
④夜さまよい歩かない動物は肉食でない。
⑤夜さまよい歩く動物は私を好きにならない。

9.復習の解説・補充問題1
[授業目標]これまでの復習テストをする

形式論理問題1
形式論理問題2
形式論理問題3
形式論理問題4

〔勉強のすすめ〕或る会議の参加者について、会場への交通手段を調査したところ、以下のことがわかった。このとき、「電車を利用しなかった人は、バスを利用した」ことを説明せよ。
ア:バスもタクシーも利用しなかった人は、電車も利用した。
イ:タクシーを利用した人は、電車も利用した。

kyouyou.pdf へのリンク 

〔勉強のすすめ〕ライオンのいる動物園には、トラもゾウもいない。このとき、トラかゾウのいる動物園にはライオンがいないことを説明せよ。また、このとき、ゾウのいる動物園にはライオンはいるか。 

10. 復習の解説・補充問題2

〔勉強のすすめ〕以下の関係をベン図で表わせ。
・A新聞をとっている家はB新聞もとっている。
・A新聞をとっている家はC新聞もとっている。
・B新聞とD新聞の両方をとっている家がある。
・C新聞とD新聞を両方とっている家はない。
このとき、B新聞をとっている家のうちには、C新聞をとっていない家があることを説明せよ。

〔勉強のすすめ〕ある市民講座で講座A,B.Cの申し込み状況は次のようであった。
 A,B講座を申し込んだ者がいた。
 C講座を申し込まなかった者はA講座も申し込まなかった。
このとき、A,B,Cの3講座を申し込んだ者がいた、ことを説明せよ。

〔勉強のすすめ〕片面にAまたはBの文字、もう片面に〇または×の記号が書かれた多数のカードが並べられている。今、「Aの文字が書かれたカードの反対側の面には、必ず〇の記号が書かれている」という記述が正しいかどうか、確かめたい。そのためには少なくとも、何と何のカードをめくる必要があるか。注意:理由として、記述が偽となるのは、何と何のカードであるから、と答えるのでは舌足らずである。まして確かめるために、何と何のカードをめくるでは、何も言っていないに等しい。

〔勉強のすすめ〕或る草野球のチームのメンバーA~Dについて以下の問いに答えよ。
①Aは火曜日と水曜日以外の試合には参加するとき、Aは金曜日の試合に参加するか。
②Bは午前中の試合には参加しないとき、Bは午後の試合に参加するか。
③Cが参加していないときDも参加していないならば、Dが参加しないときCは参加しないか。
④勝った試合はA~Cが参加していたならば、A~Cのうち誰かが来ていないとき負けであるか。

〔勉強のすすめ〕新聞の購読状況は以下のようである。
A誌かまたはB誌をとっていないとき、C誌をとっていない。このとき、C誌をとっているとき、A誌とB誌をとっていると言えるか。

〔勉強のすすめ〕或る大学で、資格試験のためにA,B二講座を開いた。その後、資格試験の合格者は少なくとも1種類の講座を受講していたことがわかった。このとき2種類の講座とも受講しなかった学生は資格試験に合格しなかった、と言えるか。ただしその大学の学生は全員その資格試験を受験していたものとする。

〔勉強のすすめ〕以下の文からどのような帰結が言えるか。[ →W・V・O・クワイン著/中村秀吉他訳、1978、『論理学の方法 原著3版』岩波書店、101ページより改変。]
①この家にいる動物は猫である。
②猫はねずみを殺す。
③肉食動物でないものはすべてねずみを殺さない。
④夜さまよい歩かない動物は肉食でない。
⑤夜さまよい歩く動物は私を好きにならない。 

11. 実用的な三段論法は限られている   参考書:野矢茂樹(1994)79-81ページ
[授業目標]三段論法の基本を習熟する

すべてのPはQである。=すべての要素についてPならばQである。
⇔P⊆Q・・・・・①
すべてのPはQではない。=すべての要素についてPならばQではない。
⇔P⊆¬Q
⇔P∩Q=∮・・・②
或るPはQである
⇔P∩Q≠∮・・・③

明らかに②と③は、否定の関係にあるから(或るPはQである)ではない=すべてのPはQではない
よってあるPはQである=(すべての要素についてPならばQでない)ではない⇔P∩Q≠∮・・・③
或るPはQではない、は③のQに¬Qを代入したものだから、
⇔P∩¬Q≠∮・・・④
これは(すべての要素についてPならば¬Qでない)ではないと同じだが、二重否定を使うと、
或るPはQではない=(すべてのPはQである)ではない
まとめると

 すべてのSはPではない=すべてのPはSではない
 或るSはPである=或るPはSである(SのなかにはPがある=PのなかにはSがある)
 (すべてのSはPである)ではない=或るSはPではない(SのなかにはPでないものがある)
 (或るSはPである)ではない(SのなかにはPがあるということはない)=すべてのSはPではない

 なおここではアリストテレス論理学が密輸入していた存在仮定を、前提にして話を進めるため、以下のような表記を取ることもある。
或るSはPである=Sの中にはPであるものが存在する
或るSはPではない=Sの中にはPでないものが存在する

〔問い〕以上の言い換え規則をベン図で確認せよ。

以下、末木剛博他著、1976、『知の根拠としての論理学』公論社、71ページ。A:全称肯定 I:特称肯定 E:全称否定 O:特称否定

1挌 M-P S-M├ S-P
2挌 P-M S-M├ S-P
3挌 M-P M-S├ S-P
4挌
 P-M M-S├ S-P
Barbara,Celarent,Darii,Ferio que prioris1格
Cesare,Camestres,Festino,Baroco,secundae
2挌
Tertia,Darapti,Disamis,Datisi,Felapton,Bocardo,Ferison
habet3挌
Quatia insuper addit Bramantip,Camenes,Dimaris,Fesapo,Fresison
4挌
微弱判断1格Barbari,Calaront2挌Cesaro,Camestrop4挌Camenos

Bで始まるのは1挌Barbara,Cで始まるのは1挌Celarent,Dで始まるのは1挌Darii,Fで始まるのは1挌Ferioに書き換え可能。

〔問い〕以下の三段論法に合う例を考えよ。
(2格E-I-O)Festino すべてのPはMでない。或るSはMである。或るSはPでない。
(3格E-A-O)Felapton すべてのMはPでない。すべてのMはSである。或るSはPでない。
(3格O-A-O)Bocardo 或るMはPでない。すべてのMはSである。或るSはPでない
(3格E-I-O)Ferison すべてのMはPでない。或るMはSである。或るSはPでない。
(4格E-A-O)Fesapo すべてのPはMでない。すべてのMはSである。或るSはPでない。

※補足Barbaraと誤解されやすいが、以下の小前提はA型でない。(主語が固有名詞になっていることに注意)
すべての職業的故売人は懲役十年以下の刑に処せられるべし。
被告aは職業的故売人である。
被告aは懲役十年以下の刑に処せられるべし。

〔勉強のすすめ〕以下の推論は正しいか検討せよ。
道の東側の人はすべてうすぎたないかまずしいかである。
道の東側の人は全部がまずしくはない。
或るうすぎたない人はまずしくはない。
三つのベン図の関係で考えてみよ。
[→W・V・O・クワイン著、中村秀吉他訳、1978、『論理学の方法 原著3版』岩波書店、100ページ。]

12. マクリーン事件[→芦辺信喜、1999、『憲法新版』岩波書店]
マクリーン事件を極度に単純化して、論理の適用の仕方を考える

U={x|すべての人間}
A={x|日本国民}
B={x|何らかの基本的人権の享有 を妨げられるもの}
としたとき
日本国民は、基本的人権の享有を妨げられない。
ことを示すベン図を描きなさい。

【マクリーン事件、最高裁大法廷判例昭和53.10.4民集三-二-七-一二二三】
四 政治活動の自由に関する憲法の保障は、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても及ぶ。
五 外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情として斟酌されないことまでの保障を含むものではない。
六 上告人の本件活動は、外国人の在留期間中の政治活動として直ちに憲法の保障が及ばないものであるとはいえないが、そのなかにわが国の出入国管理政策に対する非難行動あるいはわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものが含まれており、法務大臣が右活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものということはできない。
※補足:外国人の基本的人権は基本的には(性質上許されるときだけという例外はあるが、)保障される。たとえ政治活動(ex.マクリーンの場合ベトナム反戦運動・出入国管理法案反対・日米安保条約反対等のデモや集会に参加)についても、外国人の地位を考えに入れるとき、相当でないと見なされる政治活動を除いて保障される、とした。
〔宿題〕ベトナム反戦運動・出入国管理法案反対・日米安保条約反対について調べておこう。
 要するに「基本的人権の保障が日本国民のみを対象としていない(と解される)とき、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」。①
〔問い〕「外国人の政治活動の自由は、性質上相当でない時を除いて、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」。②
 ①から②が言えるためにはどのような前提がさらに必要か?
〔答え〕「外国人の政治活動の自由は、性質上相当でない時を除いて、その保障が日本国民のみを対象としていない(と解される)」。
(もし日本国民のみを対象としているのならば結論が言えないことに注意)
〔問い〕「外国人の政治活動の自由が、性質上相当でない」と見なされるのはどのような場合か?

※補足:つまり人権の保障は、外国人在留制度の枠内に制限されており、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障は与えられていないと判示」したのである 。

日本国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。
=日本国民Aならば、すべての基本的人権の享有を妨げられない。
=日本国民Aならば、何らかの基本的人権の享有を妨げられないもの¬Bである。
ということは、日本国民の集合Aは何らかの基本的人権の享有を妨げられるものBの補集合¬Bの集合に含まれる。
故にA⊆¬B
すなわちA∩B=∮

〔問い〕「外国人の政治活動の自由は、その基本的人権の保障が外国人の地位にかんがみこれを認めるのが相当でない(と解される)ときを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶ」=「外国人の政治活動の自由は、その基本的人権の保障が外国人の地位にかんがみこれを認めるのが相当でない(と解される)ならば、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ばない」から、判例における「国政レベルにおける選挙権(という外国人の政治活動の自由に関する憲法の保障)は、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ばない」ことはどのような前提からどう三段論法によって導き出されていると推測できるか。
〔解〕
「国政レベルにおける選挙権(という外国人の政治活動の自由に関する憲法の保障)Sは、その基本的人権の保障が外国人の地位にかんがみこれを認めるのが相当でない(と解される)¬M」。
「その基本的人権の保障が外国人の地位にかんがみこれを認めるのが相当でない(と解される)¬Mとき、外国人の政治活動の自由に関する憲法の保障は、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ばない¬P」。
「国政レベルにおける選挙権(という外国人の政治活動の自由に関する憲法の保障)Sは、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ばない¬P」。

法的三段論法
 三段論法による推認は,法規の適用においても用いられます。法規の適用において用いられる三段論法を「法的三段論法」などと呼ぶこともあります。
 法的三段論法も、大前提・小前提から結論を演繹的に導き出すことは変わりません。そして、法的三段論法における大前提・小前提は、以下のものに置き換えられることになります。
•大前提:法規(条文・条文解釈により定立される規範等)
•小前提:具体的事実
•結論:法適用の結果
 すなわち、法的三段論法とは、大前提たる法規と小前提たる具体的事実から法の適用に関する結果を導き出す推論方法ということになります。例えば、以下の例が挙げられます。
例➀
 •大前提:人を殺した者は、死刑又は無期若しくは5年以上の懲役に処する(刑法199条)。
 •小前提:AはBを殺した。
 •結論:Aは,死刑又は無期若しく5年以上の懲役に処せられる。
例②
 ・大前提:「人の身体を傷害した者は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。」(刑法204条)
 ・小前提:甲は、乙の顔を殴って、全治2週間の怪我を負わせた。
 ・結論:甲は、15年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる。
〔問い〕上の例①・例②のとき「SならばP、Sのとき、P」という形式になっていることを確かめよ。

13.解釈と論理1 憲法小テストと解説[→コンデックス情報研究所、2005、『行政書仕完全基礎後略問題集』整備同出版。]   行政書士対策試験問題から例をとる(憲法解説という趣旨ではありません。)
[授業目標]与えられた文章から、いかに妥当な結論を導くかを考えていく

正しくないものにはチェックボックスに印をつけよ。

1.監獄内での喫煙の制限は必要かつ合理的な制限である。必要かつ合理的な制限は許される(最高裁大法廷判決、昭和45年9月16日)。この判例を正しいものと仮定せよ。
□ゆえに喫煙の自由は、基本的人権に含まれるとしても、あらゆるとき、所において保障されなければならない。
2.その撮影が一般的に許容される限度を超えない相当な方法をもって行われるとき(その場合に限り)容貌・姿態の撮影は許容される。
□ゆえに何人も、その承諾なしに、みだりにその容貌・姿態を撮影されない自由を有すが、ただし警察官による撮影は証拠保全の必要性があれば、その撮影の方法を問わず許容される。
3.生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
□ゆえに生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利ついては、いかなる場合も、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
4.思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。 ただし企業者は、契約締結の自由を有し、労働者の採否決定にあたり、特定の思想・信条を有する者をその故をもって拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。
□ゆえに労働者の採否決定にあたり、特定の思想・信条を有する者をその故をもって拒んでも、それを当然に違法とすることはできない。
5.公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
□ゆえに公務員を選定し、及びこれを罷免することは、人類普遍の権利である。
6.集会、結社及び言論、出版その他の一切の表現の自由は、これを保障する。集会とは多数人が共同目的を持って一定の場所に集まることをいう。ただし、集会の自由は、他者の権利ないし利益と矛盾・衝突する可能性が強いから、必要最低限の規制を受けることはやむを得ない。
□ゆえに多数人が共同目的を持って一定の場所に集まることは、必要最小限の規制を受ける場合を除いて、その自由が保障される。
7.職業の許可制という職業選択の自由に対する強力な制限の合憲性を肯定しうるならば、それは、原則として重要な公共の利益のため、必要かつ合理的な措置である場合である。重要な公共の利益のため、必要かつ合理的な措置は認められるのは、社会政策上ないし経済政策上の積極的な目的のためか、自由な職業活動が社会公共に対してもたらす弊害を防止するための消極的、警察的目的の場合のいずれかである。薬局開設の制限は消極的規制であるが、それが排除しようとする薬局等の偏在に伴う過当競争による不良医薬品の供給は、単なる想定された観念上の危険性に過ぎない。故に公共の利益のために薬局開設の制限は、公共の利益のために必要かつ合理的な措置ではない
(最高裁大法廷判決、昭和50年4月30日。最近の趨勢と比較してみよう:後に詳述)
□ゆえに薬局開設の距離に制限を設け許可制を執ることは、違憲である。すなわち、職業の許可制という職業選択の自由に対する強力な制限の合憲性は、肯定されない。
8.すべての国民は普通教育を受けさせる義務を負う。普通教育とは小・中学校の9年の教育である
(教育基本法4条1項)
□ゆえにすべての国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に専門教育及び職業教育を含む学校教育を受けさせる義務を負う。
9.何人も、現行犯として逮捕される場合を除いては、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、逮捕されない。
□ゆえに何人も、権限を有する司法官憲が発し、かつ理由となっている犯罪を明示する令状によらなければ、いかなる場合も逮捕されない。
10.何人も自己に不利益な供述を強要されない(憲法第38条)。氏名は原則として不利益な事項に該当しない(最高裁大法廷判決、昭和32年2月20日)。この判例を正しいものと仮定せよ。
□ゆえに何人も自己に不利益な供述を強要されないが、弁護人の選任の必要上その氏名が開示されることはある。不利益な事項に該当しないからといって、そのことから論理的に名前を開示してよい、ということにはならない。
11.強制、拷問若しくは脅迫による自白又は不当に長く抑留若しくは拘禁された後の自白は、これを証拠とすることができない(憲法第38条)。自白と、不当に長い抑留・拘禁との間に因果関係のないことが明らかな場合には、かかる自白を証拠とすることが出来る
(最高裁大法廷判決、昭和23年6月23日)。この判例を正しいものと仮定せよ。
□ゆえに不当に長い抑留・拘禁後の自白は、いかなる場合も証拠とすることができない。
12.何人も、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。
□ゆえに何人も、いかなる場合であっても、その意に反する苦役に服させられない。
13.内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない
(憲法第53条)
□ゆえに内閣は、いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求がなければ、臨時会の召集を決定することができない。
14.衆議院が解散されたときは、参議院は、同時に閉会となる。ただし、内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる(憲法第54条2項)
□ゆえに衆議院の解散中に参議院議員の総数の四分の一以上の要求があれば、内閣は、参議院の緊急集会を求めることができる。
15.国会の召集は天皇の国事行為である。国会の特別会とは解散総選挙後に召集された国会である
(課題:天皇の国事行為についてまとめておこう)
□ゆえに国会の特別会の召集は内閣が行う。
16.内閣総理大臣その他の国務大臣は、両議院の一に議席を有すると有しないとにかかわらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。答弁又は説明のために出席を求められたときには、出席をしなければならない(憲法第63条)
□ゆえに内閣総理大臣その他の国務大臣は両議院の一に議席を有すると有しないとにかかわらず、何時でも議案について発言するため議院に出席することができる。
17.内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負う
(憲法第66条3項)
□ゆえに内閣は、行政権の行使について、衆議院に対してのみ連帯して責任を負う
18.内閣総理大臣は、任意に国務大臣を罷免することができる(憲法第68条2項)
□ゆえに内閣総理大臣は法律の定めるところに従い、国務大臣を罷免することができる。
19.大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を決定することは内閣の事務である。大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証することは天皇の国事行為である。
□ゆえに大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除及び復権を認証することは内閣の事務である
(憲法第73条7項をあわせて参照のこと)
20.条約を締結することは内閣の事務である。ただし、事前に、時宜によっては事後に、国会の承認を経ることを必要とする(憲法第73条3項)
□ゆえに内閣は、条約を締結する場合には、必ず当該条約の締結前に国会の承認を経ることが必要である。
21.憲法及び法律の規定を実施するために、政令を制定することは内閣の事務である。ただし、政令には、特にその法律の委任がある場合を除いては、罰則を設けることができない(憲法第73条6項)。→注:政令
□ゆえに法律の委任がない限り政令は罰則を設けることができない。
22.天皇は、内閣の指名に基づいて、最高裁判所の長たる裁判官を任命する。最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する。下級裁判所の裁判官は、最高裁判所の指名した者の名簿によって、内閣でこれを任命する。
□ゆえに最高裁判所の長たる裁判官を指名し、その他の最高裁判所の裁判官及び下級裁判所の裁判官を任命することは内閣総理大臣の権限である。
23.すべての司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。特別裁判所は、これを設置することができない。特別裁判所とは特別の人間または事件について裁判するために、通常裁判所の系列に属さない裁判機関であり、戦前の軍法会議がその典型である。もっとも裁判所の前審として、行政機関が行政処分についての審査請求や異議申立てに対して裁決ないし決定を下しても、差し支えない。
□ゆえに下級裁判所には特別裁判所も含まれる。
24.裁判所がその固有の権限に基づいて審判することのできる対象は、『法律上の争訟』、すなわち当事者間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争であって、かつ、それが法律の適用により終局的に解決することができるものに限られる。信仰の対象の価値又は宗教上の教義に関する判断は、具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の形式を取る場合であっても、例えば、その前提として信仰の対象の価値または宗教上の教義に関する判断が必要な場合、訴訟は実質的に法令の適用による終局的な解決が不可能であるから、『法律上の争訟』にあたらない。
□ゆえに信仰の対象の価値又は宗教上の教義に関する判断についても、訴訟が具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の形式を取る場合には、必ず司法審査の対象になる。→注:争訟、板まんだら事件
25.裁判官は、裁判により、心身の故障のために職務を執ることができないと決定された場合を除いては、公の弾劾によらなければ罷免されない 。ただし最高裁判所裁判官の国民審査制度による場合はこの限りではない
□ゆえに裁判官は、裁判により、職務を執ることができないと決定された場合を除き、罷免されない。
26.最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である(憲法第81条)
□ゆえに最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分に関し違憲審査権を有するが、下級裁判所は、この権限を有しない。
与えられた条件だけからは判断することができない。
27.日米安全保障条約は日本国の存立の基礎にきわめて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものである。高度の政治性を有する条約の内容が違憲なりや否やの法的判断はその条約を締結した内閣およびこれを承認した国会の高度の政治的ないし自由裁量的判断と表裏をなすものであり、司法裁判所の審査には原則として馴染まない。 ただしかかる条約も一見きわめて明白に違憲無効であると認められる場合は、裁判所の審査にかかる。
□ゆえに日本の裁判所は、条約を違憲審査の対象とすることはできない。→注:砂川事件・統治行為論

■判例について:判決理由(ratio decidendi)の部分は、後に起きた別の事件で、同じ論点が法律的に問題となったとき、裁判のよりどころとなりうる先例と見なされる。ただし判例は先例による事実上の拘束にとどまる。十分の理由があるならば、判例の変更は可能と解される。上で扱った判例も、その意味においては相対的な意味で「妥当性」をもつものにすぎない。
公共の福祉に反しない限り:憲法第13条。もしくは経済的自由について、「公共の福祉」による制限がある旨を第22条・第29条で規定している。一元的外在制約説、内在・外在二元的制約説、一元的内在制約説、比較衡量論、二重の基準論。二重の基準論についてだけ、設問7との関係で後で詳しく取り上げる。
集会の自由:公安条例判決参照のこと。〔問い〕上告審の要旨を以下に掲げる。批判するとしたら、どのような点を指摘すればよいか。
 「本条例の対象とする集団行動、とくに集団示威運動は、本来平穏に、秩序を重んじてなさるべき純粋なる表現の自由の行使の範囲を逸脱し、静ひつを乱し、暴力に発展する危険性のある物理的力を内包しているものであり、従つてこれに関するある程度の法的規制は必要でないとはいえない」。
政令:内閣が制定する命令。憲法および法律の規定を実施するための執行命令と、法律の委任に基づく委任命令とがある。
■争訟:「法律上の争訟」にあたらず、裁判所の審査権が及ばない場合・事項として(1)具体的事件性がなく、抽象的に法令の解釈または効力について争うこと。(2)単なる事実の存否、個人の主観的意見の当否、学問上・技術上の論争。(3)信仰の対象の価値又は宗教上の教義に関する判断を求める訴え、あるいは宗教上の地位の確認の訴え→板まんだら事件

14.解釈と論理2 憲法小テストと解説   行政書士対策試験問題から例をとる
[授業目標]前回の課題を復習する

補足[←問い6] 憲法13条の「公共の福祉に反しない限り」という但し書きを検討してみましょう。「限り」という言葉は坂井秀寿・坂本百大著、1971、『新版 現代論理学』東海大学出版会42、44ページで指摘されているとおり、極めて多義的に用いられる言葉です。13条だけではなく、憲法の他の条文も考えに入れて、どう解釈すべきか考えましょう。公共の福祉には、自由国家的公共の福祉と、 社会国家的公共の福祉とがあるとされています。
 前者は、形式的公平・内在的制約・消極目的規制ともいわれ、それは、「各個人の基本的人権の共存を維持するという観点での公平」を趣旨としています。ちなみに、精神的自由権等の重要な人権に対しては、自由国家的公共の福祉すなわち消極目的規制のみが可能である、とされています。
 後者は、実質的公平・政策的制約・積極目的規制ともいわれ、「形式的公平に伴う弊害を除去し、人々の『社会・経済水準の向上』を図るという観点での公平」と解するのが通説です。例えば、弱者を保護するため、社会経済全体の調和ある発展のためになされる規制であると考えられています。
 社会国家的公共の福祉は後に述べるとして、自由国家的公共の福祉にこだわってみましょう。人権に対して自由国家的公共を実現するためになされる消極目的規制の事例として、以下のものがあります。
・集会の自由を制限する凶器準備集合罪
・表現の自由(集団示威行進)を制限する公安条例の規定
・選挙運動の制限・名誉毀損罪・わいせつ文書頒布罪
 翻って憲法11条で国民は、すべて基本的人権の享有を妨げられない、とされていますが、公共の安寧を保持する目的から、消極的規制がなされないわけではありません。例えば公安条例の判決のさい、集団示威運動が、全くの自由に放任されるべきものであるか、それとも公共の福祉――本件に関しては公共の安寧の保持――のためにこれについて何等かの法的規制をなし得るか、について判断下されました。その判決において、公共の福祉のために一定の制限が妥当である、という判断がなされました。

裁判官の罷免についての場合分け[←問い25]
 心身の故障のため職務を果たすことができなくなったと認められたとき、及び弾劾裁判所の罷免の判決を受けたときを除き、罷免されることはありません。ただし、最高裁判所の裁判官については、国民が直接その適格性を審査する国民審査制度があり、国民の投票により、その多数が罷免を可としたときも罷免されます。
 ですから裁判官の罷免されるケースとして、
第一に、最高裁判所の裁判官が国民審査制度で、投票により国民の多数が罷免を可とした場合。
第二に、公の弾劾による場合。
第三に、心身の故障のため職務を執ることができないと決定された場合です。
 では、次の文章は○か×か。
 裁判官は、裁判により心身の故障のため職務を果たすことができなくなったと認められたときを除き、罷免されない。
■Aのときを除き、B。=Aのとき、Bでない。Aでないとき、Bである。(ex.平日を除いて休業です。=平日は休業でない。平日でないときは休業である。)裁判官は、裁判により心身の故障のため職務を果たすことができなくなったと認められないとき、罷免されないだろうか。
 裁判官が心身の故障のため職務を果たすことができなくなったと認められたとき、弾劾裁判所の罷免の判決を受けたとき、及び最高裁判所の裁判官が国民の投票により、その多数が罷免を可としたとき、罷免される。

砂川事件判例[←問い27]
 本件安全保障条約は、〔前述のごとく、〕主権国としてのわが国の存立の基礎に極めて重大な関係をもつ高度の政治性を有するものというべきであって、その内容が違憲なりや否やの法的判断は、その条約を締結した内閣およびこれを承認した国会の高度の政治的ないし自由裁量的判断と表裏をなす点がすくなくない。それ故、右違憲なりや否やの法的判断は、純司法的機能をその使命とする司法裁判所の審査には、原則としてなじまない性質のものであり、従って、一見極めて明白に違憲無効であると認められない限りは、裁判所の司法審査権の範囲外のものであって、それは第次的には、右条約の締結権を有する内閣およびこれに対して承認権を有する国会の判断に従うべく、終局的には、主権を有する国民の政治的批判に委ねられるべきものであると解するを相当とする。

下線部が「認められる場合ならば」と書き換えれば、少なくともどのようなことが言えるか。

〔問い〕裁判官が罷免されるのはどのようなときか。

15.まとめのテスト及び解説   [→教科書:田辺勉(1993)13-14ページ]


〔文献一覧〕
オールウド他著、公平珠躬・野家啓一訳、1979、『日常言語の論理学』産業図書。
芦辺信喜、1999、『憲法新版』岩波書店。
コンデックス情報研究所、2005、『行政書仕完全基礎後略問題集』成美堂出版。
三井誠・曽根威彦・瀬川晃編、2000、『入門 刑事法』有斐閣。
三浦俊彦、2002、『論理パラドクス』二見書房。
野矢茂樹、1994、『論理学』東京大学出版会。
野矢茂樹、1997、『論理トレーニング』産業図書。
W・V・O・クワイン著、中村秀吉他訳、1978、『論理学の方法 原著3版』岩波書店。
坂井秀寿・坂本百大著、1971、『新版 現代論理学』東海大学出版会。
末木剛博他著、1976、『知の根拠としての論理学』公論社。
鈴木美佐子、2004、『論理的思考の技法Ⅰ』法学書院。
田辺勉、2008、『上・中級公務員 標準判断推理改訂版』実務教育出版。